低温低速調理法とは?弱火で美味しい料理を作ろう!
低温低速調理法って聞いたことがありますか。
世界の3星レストランでは常識になりつつある調理方法で、時間をかけて加熱をしてゆく調理法のことです。
パリでもっとも予約の取れないフレンチレストランの「アストランス」も、東京で予約の取れないフレンチレストランの「カンテサンス」の加熱方法はもちろん低速加熱なのだそうです。
低温低速加熱って何?
低温低速加熱は、弱火による低温での加熱が、うまみを閉じ込める先端調理として注目されています。
しかし、ここで勘違いしてほしくないのは低温加熱ではなく低速加熱が重要なことです。
低温加熱は肉のうまみ成分を一番引き出す温度60~75℃の中間70℃程度以上にならないように加熱する調理法です。
一方、ここで重要視する低速加熱とは、素材に「ゆっくり」と熱を加えてゆく調理法で加熱の「速度」に焦点をあてます。
低温加熱の70℃に至る過程「低速加熱」こそが美味しさの秘密なのです。
強火は美味しさを壊す
「フライパンを熱してから焼く」というのは、エネルギーが急速に素材に伝わるため、細胞がギュッと収縮して固くなると同時に素材から一気に水分が放出されます。
温度が高ければ高いほど当然縮み具合が大きくなりますが、余分なアクや臭みが完全に出切らないまま表面だけが焼きあがってしまいます。
確かにじわじわ加熱すると肉が固くならないというのはわかります。
フライパンを温めることが悪いのではなく、フライパンが温まっていく過程における調理こそに注目しているのですね。
加熱の科学
「低温低速オーブンで加熱調理した牛腿肉の性状」という東京家政大学の研究者らの論文があります。
塊肉を低温長時間加熱したものと、いわゆる昔ながらの塊肉のローストのレシピに近い手法で焼き上げ、双方を比較し考察する研究なのですが、低温低速で加熱した肉の方が外観、舌ざわりに関する全項目と、味に関する好ましい味という項目に関して高い評価を得ました。
どんな加熱が料理を美味しくするのでしょうか。では加熱のしくみをみてみましょう。
素材の成分は加熱の温度によって次のように段階を経て変化してゆきます。
- 1. 40~50℃ 肉などの細胞の細胞膜や筋膜が収縮する温度帯
- 2. 45~55℃ 余分な代謝物(細胞外の水分)を放出する温度帯(アクが出る温度帯)
- 3. 60~75℃ たんぱく質が凝固して成分分解が進みアミノ酸が増加、また体内で消化されやすい成分に変成する温度帯
- 4. 68~80℃ コラーゲンがゼラチンに分解されて柔らかさが高まる温度帯
ゆっくりを合言葉に調理しよう!
弱火~中弱火の火加減を使うこなすことができれば、どんなフライパンでも、スーパーの特売品であっても、充分にクオリティの高い肉や魚を焼きあげることができるのです。
弱火~中弱火調理の流れを確認しておきましょう。
- 1.熱していないフランパンに素材をのせます
- 2.中弱火をキープして徐々に温度があがっていくのを見守ります
- 3.その間にアク取りをしておきます
- 4.後半で表面に焼き色をつけていきます
- 5.最終的に中まで火を通します(最初の重量の80~85%くらいがベストの目安)
いたってシンプルです。冷たいフライパンから、しかも中弱火で焼くので時間はかかりますが、仕上がりはやわらかく、とてもジューシー。
ゆっくり加熱したことによって加熱が過度に進まないために、時間が経っても肉はやわらかいまま、切り口からも最小限の肉汁しか流れ出ず、べたついたり臭くなることもないのです。
ゆっくり、ゆっくりのシンプルに調理することは、極限まで食材にストレスをかけることなく加熱法であり、その食材の旨味を最大に引き出し、その素材をもっとも美味しく味わえる食感が得られるのですね。