冷えとストレスが免疫機能を下げる原因?
花粉症や風邪をひいたときには、咳、痰、鼻水、汗、かゆみが出たり、下痢したりしますが、
これは細菌やウイルスなどの異物を体の外へ排出しようとしている体の働きです。
また、「発熱」は異物と闘うリンパ球を増やそうとしており、「痛み」は異物と闘う顆粒球が活発に働いている現れとも言えますが、
このように花粉症、風邪などの原因となる異物やウイルスを生まれながらに退治する力が私たちの体の中には備わっています。
いわゆる「免疫」と呼ばれる防御システムですが、どんな機能なのか改めてみておきましょう。
ちなみに花粉症はこの防御システムが過剰に反応している免疫異常の状態のひとつです。
2つの免疫システム
免疫組織は、大きく新旧2つの免疫組織グループに分けられます。
古い免疫システムに属する免疫組織は、外敵が侵入しやすい部位(例えば耳下腺、顎下腺、肝臓、腸管、皮膚など)に集中しておりその中心となるのは腸です。
体内の異常細胞や老廃物を処理しています。
それに対し、新しい免疫システムはヒトの進化の過程で誕生してきたウイルスなどにも対処すべく、さらに複雑で高度な免疫の機能をもち合わせます。
胸腺、リンパ節、脾臓などの組織で、血液に入り込むウイルスなどの外敵を退治します。
免疫と白血球の関係
免疫を担う白血球にはさまざまな種類があります。
大きくは「マクロファージ」「顆粒球」「リンパ球」の3つに分けられますが、それぞれ異なる役割をもっています。
古いタイプの免疫システム「自然免疫」を担うのはマクロファージや顆粒球で、進化の過程で形成された新しいタイプの免疫システム「獲得免疫」はリンパ球が担っています。
マクロファージはもっとも古くからある免疫細胞ですべての免疫細胞の原型です。
アメーバー状のかたちをしており、細菌のように大きな異物や老化して壊れた細胞や固まった血液などの異物を丸のみして消化します。(貪食作用)
顆粒球は、貪食作用がさらに進化した細胞で細菌が侵入すると一番に駆けつけ強力な貪食作用を発揮します。
白血球の中で一番多い成分の顆粒球は平常で約60%を占めます。
リンパ球はマクロファージや顆粒球が見逃したウイルスなど小さな外敵や異物を退治します。
リンパ球にはT細胞、B細胞、NK細胞などがありさらに細かく分類されますが、総勢の連帯プレーで働きます。
リンパ球の免疫システム(獲得免疫)特有の働きは、体内に侵入した外敵や異物を覚えておき、2回目以降に侵入したときにすばやく発見して強力な武器でやっつけることです。
主にキラーT細胞とB細胞が担っています。
ひとつ注意しておきたいことは、体に害を及ぼすものは外敵ばかりとは限りません。
際限なく増殖するように変化してしまった自身の細胞「がん細胞」も敵のひとつです。
こちらの排除を担当するのはNK細胞と胸腺外分化T細胞です。
自律神経のバランスが免疫力のカギ
私たちの体の中に自然に備わる精密な免疫システムの調子がおかしくなるときはどんなときなのでしょうか。
それは自律神経のバランスが乱れるときです。
交感神経と副交感神経からなる自律神経は、生命を維持するために脳からの指令を受けて体内環境を調整しています。
この自律神経は周囲の環境や状況、さらには心の状態などにも応じながら働いています。
そして免疫細胞もこの働きと連動しています。
交感神経が優位に働いているときには顆粒球の比率が増え、副交感神経が優位になるときにはリンパ球の比率が上がります。
ちなみに、花粉症はリンパ球が多く関与している免疫過剰反応です。
冷えによる免疫力の低下
ライフスタイルや食習慣の変化で、いつも36℃以下しかない低体温のひとが増えていると言われます。
体内の生命活動に欠かせない酵素が十分に働ける体温は36.5℃くらいです。
低体温になると、体内の生命活動が低下するのはもちろん、慢性的なエネルギー不足状態になって体内の代謝力や免疫力も低下して病気にかかりやすくなります。
現代人の低体温になる大きな原因のひとつがストレスの多い生活であると言われます。
ストレスによる免疫異常
ストレスにさらされた生活を送っているとなぜ低体温になるのでしょうか。
私たちの体は2つのエネルギーを使い分けることで健康を保っています。
1つは食べ物に含まれるブドウ糖を利用する「解糖系」と、細胞中のミトコンドリアという組織が酸素を使って作りだす「ミトコンドリア系」のエネルギー系統です。
ところが、睡眠不足、長時間労働、心労などさまざまなストレスがたまりすぎると、
すぐに力を発揮できる解糖系のエネルギーばかりに偏ってしまい、酸素を活用し体温を維持するミトコンドリア系のエネルギー系統が働く機会を奪ってしまいます。
そうすると、体は低体温・低酸素の環境に傾き、免疫力の低下を招くというわけです。
健康な状態では交感神経と副交感神経が常にうまく切り替わりながら適した一定モードを保つように働いています。
しかし何らかの理由でどちらか一定に偏りすぎると免疫にも影響を及ぼすことがわかりました。
何でも過ぎたるは及ばざる如しで、自律神経の偏りをちょっとしたライフスタイルや何気ない生活習慣が招いているとしたら、
無理をしたら適度な休養をとるなど偏った自律神経の乱れを補正するようなライフスタイルの見直しをすることは
やはり基本となるでしょう。